宵昇のころ―プレマネ課長の残業事録―

宵昇(よいしょう)と読みます。主にライフログです。

「シフトを変えれば解決する」という、あまりに浅薄な机上の空論

また、上層部から現場を混乱させる「思いつき」が降ってきた。

「ノルマを達成するために、就業時間を変えて2交替制にしたらどうか」 「稼ぎ時である土日祝日に人員を集中させ、長時間稼働させるべきだ」

部長がそう息巻いているらしい。 言いたいことは分かる。数字だけを見れば、需要のある日にリソースを集中させるのが一番効率的に思えるのだろう。戦術としては、極めてシンプルだ。

だが、人事の現場を預かる身としては、この提案に対して「あまりに現場を知らなさすぎる」と、深い溜め息を禁じ得ない。

 

1. 就業規則の変更は、おもちゃのブロックを組み替えるのとは違う

そもそも、働く時間を変えるということは、会社のルールである「就業規則」を変更する手続きが必要になる。これは、部長の気分一つで「明日から2交替ね」と決められるような軽い話ではない。

労働契約法における「不利益変更の禁止」という原則を、彼らは知っているのだろうか。

  • その変更は、合理的に考えて本当に必要なのか。

  • 変更によって、社員が被る不利益(私生活への影響、体力的負担など)の程度はどれほどか。

  • それに対して、会社側はどれだけ丁寧な説明をし、同意を得る努力をしたのか。

これらを一つずつクリアし、労基署への届け出や労使の合意形成という「丁寧なプロセス」を踏んで初めて成り立つものだ。人を、ただの「シフト表のコマ」としか思っていない人間には、このプロセスの重要さが理解できないのだろう。

 

2. 「納得感」なき改革が、次の火種を生む

実際に働くのは、感情を持った生身の社員だ。 土日祝日に無理な長時間労働を強いられ、これまでの生活リズムを狂わされる。そこに「納得感」がなければ、間違いなく現場は反発する。

不満は、静かに、しかし確実に組織の根底に溜まっていく。 ミスが増え、体調を崩す者が現れ、最悪の場合は優秀な人間から順番に会社を去っていくだろう。ノルマを達成するために導入した制度のせいで、現場が崩壊しては本末転倒ではないか。

ただでさえ、トップダウンで突然下りてくる理不尽な指示に、現場は辟易しているのだ。このタイミングでこんな爆弾を投下すれば、社内の雰囲気がどうなるか、想像すらできないのだろうか。

 

3. モチベーションを管理できないマネージャーの末路

数字を追うことは管理職の使命だ。それは否定しない。 だが、その数字を叩き出すのは「社員のモチベーション」であり、「エンゲージメント」だ。

現場の士気を引き下げ、反発を生むような施策しか打てない時点で、個人的には「管理職として失格」だと言わざるを得ない。人は、叩けば動く機械ではない。どれだけ綺麗に作られた人員配置計画も、そこに働く人の「意志」がなければ機能しないのだ。

組織を壊して数字を取るか。それとも、人を育てて組織として強くなるか。 俺は後者の「強い人事」を信じているし、そのために、この暴論に対しては人事の盾として、毅然と立ち塞がるつもりだ。