
倉庫の奥で埃をかぶった古いアルバムを閉じたとき、俺の胸に去来したのは、かつて背中を追いかけた恩師たちの「枯れた美学」だった。
会社を辞めたら、もう会うことはない――。 寸分の誤魔化しもないその言葉の重みを、42歳になり、複数の役職を兼務してのたうち回る今なら、痛いくらいによく理解できる。出会いには必ず別れがあり、組織という細い糸で繋がっているだけの俺たちの関係は、いつか必ず終わりを迎える。
だからこそ、だ。 だからこそ、今、俺の目の前にいる部下たちとの一瞬の時間は、信じられないほどに尊い。いつか別れるその日まで、彼らの盾となり、彼らが安心してそれぞれの持ち場で真っ直ぐ歩くための滑走路を命がけで守ること。それだけが、理想の上司像にいつまでも追いつけない俺にできる、唯一の戦いなのだ。
そして、その「戦い」の最前線とも言える季節が、今年もやってきた。 前年度の勤務評定。組織という冷徹なシステムが弾き出した数字を手に、生身の部下たちと一対一で対峙する「フィードバック面談」の季節である。
今年度、人員不足の穴を埋めるために急遽3つの役職を兼務することになった俺のデスクには、それぞれの背景を持った4人の部下たちの評定シートが並んでいた。 自走モードに入った4年目の若手、限られた時間で成果を出す短時間勤務の母親、期中異動の荒波を乗り越えた右腕の係長、そして、今年度から俺が兼職することになった部署を守り続ける、定年間際のベテラン女性係長。
冷房の効いた面談室。ポーカーフェイスの仮面を被りながら、俺は一人ひとりの人生と、その背中にある葛藤に向き合うために、静かにドアを開けた。
1. 完璧な「自走」を始めた若手への、チアアップ
最初に面談室に入ってきたのは、入社4年目の若手だった。 先日、あるプロジェクトの最終選考で見事な成果を収め、このブログでもその成長っぷりを書かせてもらった彼女だ。
彼女の総合評点は、100点満点中「90.00点」。文句なしの、圧倒的な高評価である。 シートを開き、俺はいつもより少しトーンを和らげて語りかけた。
「〇〇さん、前年度の勤務評定結果のフィードバックを行います。まず、今回の総合評点は90点。これは我が部署のなかでも文句なしのトップクラスであり、この1年間、本当に素晴らしい成果と行動を見せてくれた証拠だと思います。」
彼女の表情が、一瞬でパッと明るくなる。だが、俺はそこで終わらせない。サイボーグ的な冷徹な目で分析した、彼女の「強みの因数分解」を言葉にして伝えていく。
「高く評価しているポイントは3つある。1つ目は、圧倒的な業務遂行力と安定感だ。多量な業務やイレギュラーが舞い込むなかでも、自分で適切に優先順位をつけて、大きくペースを乱さずにやり遂げてくれた。2つ目は、コミュニケーションの質。上下だけでなく左右の横のつながりに対しても、タイミングを逸することなく確実な情報共有ができていた。特に、日頃からインフォーマルな交流を上手く活用して、周囲の職員からの確固たる信頼を構築できていたことが、円滑な業務推進に大きく繋がっている」
彼女は真剣な眼差しで、俺の言葉を一つひとつ噛み締めるように頷いていた。
「そして3つ目は、高い当事者意識と責任感だ。我が社の創立●周年プロジェクトのワークショップや防災訓練の運営など、大きなイベントでも主体的に責任を持って最後までやり遂げてくれた。外の業者の方への接遇においても、ただの一社員としてではなく『組織の代表として対応している』という高い意識が見えたよ。本当に素晴らしい」
ひと通り絶賛した後、俺は椅子の背もたれに体を預け、あえて少しシビアな「未来の課題」を提示した。90点を取った人間に必要なのは、甘やかしではなく、次の高い打席への案内だからだ。
「本当に文句なしの評価だけど、4年目を迎えた〇〇さんだからこそ、今後さらに期待したいステップアップのポイントも2つだけ伝えておく。1つ目は、業務改善への積極的な提案だ。自分の業務のカイゼンへの意識はとても高いから、今後はそれをさらに広げて、部署全体や組織全体の業務効率化に繋がるような、積極的な提案や巻き込みを期待している。2つ目は、より難易度の高い相手への応対とセルフケアだ。今後は、時には少し困難な相手と交渉・応対する場面も増えてくると思うが、そこは恐れずに経験を積んでいってほしい。また、周囲を気遣ってくれるのはありがたいが、自分自身のセルフケアについても、何かあれば遠慮なく俺に提案や相談をしてくれ」
最後に、俺は彼女の目を真っ直ぐに見つめた。
「一度この高い『自走の流れ』に乗ってしまえば、仕事がさらに面白い仕事を呼ぶようになる。今回の結果を大きな糧にして、自信を持ってさらに前進していってください。この1年間、本当にありがとう。これからも期待しています」
「ありがとうございます! がんばります!」と頭を下げて部屋を出ていく彼女の背中を見送りながら、俺は心の中で小さくガッツポーズをした。彼女の滑走路は、たぶんもう完璧に整備されている。あとはどこまでも高く飛んでいくだけだ。
2. 限られた時間のなかで、奇跡を起こす母親への労い
次に部屋に入ってきたのは、育児短時間勤務を取得中の部下だった。 まだ手のかかる小さな子どもを育てながら、限られた時間のなかで常に時計と睨み合い、驚くほどの密度で仕事をこなす女性職員だ。
彼女の評点は「89.50点」。フルタイムの社員と同等、いやそれ以上の圧倒的なパフォーマンスに対する数字だ。
「〇〇さん、お疲れ様。今回の総合評点は89.50点です。短時間勤務という限られた制約のなかで、これだけの高い成果と行動を維持し続けたことは、本当に素晴らしいの一言に尽きます。大変な苦労や工夫があったこと、俺はちゃんと見ているよ。本当にありがとうございます」
彼女の目元が、少しだけ潤んだように見えた。限られた時間で働く人間は、常に「周囲に迷惑をかけているのではないか」という目に見えない罪悪感と戦っている。まずはその呪縛を解くことが、上司である俺の役目だ。
「具体的に評価しているのは、まず、イレギュラーに動じない確実な業務遂行力。年度途中に上長が異動するという大きな組織変更があったなかでも、主体性を持って係の業務を一切支障なく回してくれました。マニュアルや過去の事例を深く理解した上での正確な状況判断、そして感情に左右されない見事なセルフコントロール能力があったからこそです。2つ目は、丁寧なコミュニケーションと周囲への気配り。相手の言い分を親身に聞きつつも、こちら側の主張も適切に伝えて双方のバランスをうまく取る、非常に質の高い対応ができています。部署のムードメーカーとしても大きく貢献してくれました。そして3つ目は、当部署が主管となった研修で見せてくれた高い表現力。事前の資料作成から当日の要点を押さえた丁寧な説明まで、〇〇さんの能力が存分に発揮されていました」
彼女は小さく深く息を吐き、「見ていてくださって、本当に嬉しいです」と静かに微笑んだ。そこに、俺は「次へのギア」をそっと差し出す。
「〇〇さんが今後さらに輝き、ステップアップしていくために、次のステップへのアドバイスも2つ伝えておきます。1つ目は、さらなる効率化・省力化への挑戦。すべての対応が非常に丁寧なのは素晴らしい強みだけど、限られた時間のなかでさらに高みを目指すために、業務の優先順位をさらに厳格に見極めること。アイゼンハワーマトリクス(緊急度と重要度のマトリクス)などを意識して、『ここはもう少し力を抜いて効率化しても良い』という部分を見つけ、よりスマートに立ち回る術を磨いていってほしい。2つ目は、周囲を上手く巻き込むこと。自分一人で責任を持って最後までやり遂げようとする責任感は十分すぎるほど伝わっているからこそ、今後は、目標達成に向けて『周囲のメンバーを上手く頼り、動かしていくこと』にもぜひ挑戦してみてください。チームを巻き込むことで、〇〇さんの負担を減らしつつ、より大きな成果が出せるはずです」
俺は言葉を区切り、彼女の目をしっかりと見つめた。
「限られた時間だからこそ、多角的に周囲を巻き込み、自走していくおもしろさがあります。〇〇さんはすでに我が部署になくてはならない強力な軸です。自信を持って、これからも一緒に働きやすい強い部署を作っていきましょう。この1年間、本当にお疲れ様でした。ありがとう」
彼女が席を立った後、俺は手元の書類に目を落とした。時間を言い訳にしない彼女の姿勢は、あの「ハーフパンツを履きたい」などとぬるいことを言っていた他部署の課長や、「クールビズはいらん」と精神論を吐く部長に見せてやりたいくらいだ。生身の人間が限られた時間のなかで本気で戦うとは、こういうことなのだ。
3. 異動の荒波をポーカーフェイスで乗り越えた、右腕への敬意
3人目は、年度途中に異動してきたばかりの男性係長だった。 年齢は俺の2〜3歳下。私生活では自身の健康問題の不安を抱えながらも、冷静に現場を統率してくれている、今の俺の絶対的な右腕だ。
彼の評点は「86.20点」。期中異動というハンデ、そして不慣れな業務ばかりだった状況を考えれば、破格の評価である。
「〇〇さん、前年度の勤務評定結果のフィードバックを行います。総合評点は86.20点。年度途中での異動という大きな環境変化のなかで、これだけの実績と組織貢献を見せてくれたこと、担当課長として心から感謝しています。本当に素晴らしい奮闘ぶりでした」
彼はいつものように、感情を表に出さないポーカーフェイスで「ありがとうございます」と短く応えた。その生真面目な横顔に、俺は彼の泥臭い功績を一つずつ並べていく。
「具体的に高く評価しているポイントを3つ伝えます。1つ目は、異動直後からの圧倒的な責任感と柔軟性だ。予算や施設修繕など、優先順位を付けにくい未経験の業務ばかりのなかで、大変な苦慮があったと思う。しかし、担当係長として常に責任を持って前面に立ち、粘り強く向き合ってくれた。感情の起伏を一切見せない見事なセルフコントロールは、周囲の職員にも非常に良い安心感を与えていたよ。2つ目は、システム更新プロジェクトにおける卓越した統率力だ。特に年度末の情報システム更新においては、部署間の垣根を超えた責任者として全体を力強く統率し、円滑な移行を実現してくれた。この即戦力としての動きと組織運営への貢献度は極めて高く、文句なしの評価です。3つ目は、円滑な連携と信頼関係の構築。他課との連携を上手く使い分け、新しい部下たちとも積極的な対話を通じて、短期間で厚い信頼関係を構築してくれたことも、非常に頼もしく見ていました」
彼の視線が、手元の評定シートへと向けられる。その奥にある、彼自身の「もっとできたはずだ」というもどかしさを、俺のセンサーは敏感に察知していた。
「〇〇さんご自身の自己評価としては、業務がまだひと回りしていないこともあり、満足のいく結果ではなかったと感じているかもしれない。しかし、今後に向けたポテンシャルは建前抜きで十二分に感じています。そこで、次年度に向けてさらに期待したいステップアップのポイントを2つ伝えます。1つ目は、業務改善計画の実行と、さらなるスキルアップ。前年度は準備段階まで進めた職場改善を、新年度はぜひ形にしていきましょう。また、この業務は短期間で習熟できるものではないから、今後経験を積みながら、〇〇さんなりのノウハウを積み上げていってほしい。2つ目は、経験を活かした部下への指導だ。前年度はご自身が業務を習熟することに重点を置かれていたと思うけれど、〇〇さんはコンプライアンス意識も高く、適切な判断ができる人だ。今後はその背中を見せながら、部下の育成・指導にも徐々に力を貸してほしいと思っています」
俺は少し身を乗り出し、トーンを一段落として告げた。
「一度この『自走の流れ』を掴んでしまえば、仕事はさらに面白くなりますし、〇〇さんなら間違いなくこの部署の強力なコアになれると確信しています。身体のことも含めて、何かあれば、いつでも俺を頼ってください。この期中からのタフな期間、本当にありがとう。新年度も期待しています」
「……はい。これからもよろしくお願いします」 彼が深く一礼して部屋を出て行ったとき、俺は静かに胸を撫でおろした。彼が抱えた不安の全てを、俺が消し去ることはできない。だけど、彼がこの会社で真っ直ぐ歩き続けられるための道を整備し、安心して戦える場所を守り抜くことは、このサイボーグを自称する俺に課せられた絶対的な任務だ。
4. 61歳のベテラン女性係長へ、新任の上司が放った本音
そして最後、面談室のドアを叩いたのは、今年度から俺が兼職することになった別の部署の係長だった。 年齢は61歳。女性。来年度には定年退職を控えている、我が社の大ベテランである。
今回の勤務評定自体は、前任の上司が行ったものだ。総合評点は「74.80点」。組織のシステムが弾き出す平均的な、どこか「事なかれ主義」的な堅実評価の数字。だが、俺はこの面談を、単なる数字の通知で終わらせるつもりは毛頭なかった。なぜなら、今年度から3つの役職を兼務することになった俺が、この過酷な日々を倒れずに乗り切れるかどうかは、ひとえに、この61歳のベテラン係長がどれだけ力を発揮してくれるかにかかっているからだ。
彼女は、少し遠慮がちな、だが長年組織を生き抜いてきた独特の落ち着きを持った佇まいで、対面の椅子に腰掛けた。
「〇〇さん、お疲れ様です。前年度の勤務評定結果のフィードバックを行います。今回の評定は前任の上司が評価したものになりますが、総合評点は74.80点となっています。ただ、細かな項目を読み込んでいくと、〇〇さんが長年培ってきた経験と、周囲への細やかな配慮が随所に光る、非常に安定感のある素晴らしい内容だと俺は受け止めています」
彼女は少し驚いたように、ゆるふわパーマに髭を蓄えた俺の顔を見つめた。俺はシートに書かれた前任者の冷たい活字に、生身の熱を吹き込んでいく。
「具体的に高く評価されているポイントを3つ伝えます。1つ目は、高いコンプライアンス意識と、具体的な成果です。他部門へインシデントレポートの提出を熱心に推奨してくれた結果、提出件数が前年度より確実に増加しました。また、社内文書の改訂や廃棄作業でも、各部署との事前の調整からスケジュール管理まで、ご自身で完璧にコントロールして期日までに完了させてくれました。手順の再確認やダブルチェックを徹底する姿勢は、組織の安全を守る上で本当に心強いです。2つ目は、他部門や後輩への、円滑な連携と支援。日常的に周囲へ細やかな配慮を行い、組織の内外で強固な信頼関係を築いてくれています。ご自身の豊かな知識や経験を、他部門の後輩たちにも惜しみなく提供して成長を支援してくれている点も、高く評価されています」
彼女は静かに耳を傾けながら、かすかに目元を和らげた。
「3つ目は、困難な状況における責任感と柔軟性です。業務が難航する場面や突発的な問題が起きたときでも、決して感情を乱さず、冷静に代替案を検討して最後までやり遂げる。このセルフコントロール能力と前向きな姿勢は、周囲のスタッフにも非常に良い影響を与えていました。前任者からは、さらなる期待として、インシデントレポートの提出増に向けた新たな改善策の提案や、相手に応じた表現力をさらに磨いていってほしい、という課題も挙げられています」
一通りシートの内容を読み上げた後、俺は手元の資料をゆっくりと裏返し、机の上に置いた。 ここからは、前任者の評価ではない。新しく上司になった、42歳の俺個人の、むき出しの本音を伝える時間だ。
「――ここまでは前年度の評価です。ここからは、今年度から上司となった、俺個人の本音と、〇〇さんへの心からの願いを伝えさせてください」
俺のトーンの変化に、彼女の背筋がわずかに伸びた。
「今年度、俺はこの部署を含めて3つの役職を兼務することになりました。正直に言います。俺が今年、この過酷な兼務を倒れずに全うできるかどうか、そしてこの部署がうまく回り続けるかどうかは、ひとえに、係長である〇〇さんの力にかかっています。それくらい、俺は〇〇さんの実務力と、周囲から慕われる人間性を頼りにしています」
彼女の目に、明らかな動揺と、それ以上に、一人のプロフェッショナルとしての強い光が灯るのが分かった。
「来年度には定年を控えられているかと思います。ですが、どうかその豊富な経験と知恵を、新任の若い上司である俺に貸してください。〇〇さんが現場の前線で安心してタクトを振るえるよう、外からの理不尽や責任はすべて俺がこの背中で受け止めます。〇〇さんの存在そのものが、今の俺にとって最大の強みなんです。今年度、この部署を最高の組織にするために、ぜひ一番近くで伴走してください。よろしくお願いします」
彼女はしばらくの間、言葉を失ったように俺を見つめていた。やがて、その深く刻まれた目元のシワをさらに深くして、力強く、だが優しく微笑んだ。
「……わかりました。頼りないベテランですけど、課長がそこまで言ってくださるなら、私にできることは何でもやらせていただきます。一緒に乗り切りましょう」
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の奥の、張り詰めていた何かが静かに解けていくような感覚があった。
結びに代えて:会者定離のなかで、俺たちが残すもの
面談を終え、深夜の静まり返ったオフィスに戻ったとき、俺は大きく背伸びをした。 窓の外を見やれば、夜の街には相変わらず冷たいネオンの光が滲んでいる。
就職氷河期世代としてあらゆる面で割を食い、今もなお3つの役職を兼務して泥をすすりながら走っている俺の会社員人生。経営層が水面下で進める時代錯誤な「新・人事制度」の極秘資料に怒りを覚え、ハーフパンツやクールビズをめぐる不毛な服装論争に頭を抱える毎日。 理想の上司という高い壁には、いつまで経っても手が届きそうにない。
だけど、今日、面談室で部下たちと交わしたあの生々しい言葉のキャッチボールのなかにこそ、俺がこの会社で生きている意味のすべてが詰まっていた。
完璧な自走を始めた4年目の彼女も、 限られた時間のなかで奇跡のような高密度で働く母親も、 病の不安をポーカーフェイスで隠して前を向く右腕の彼も、 そして、新任の俺に「一緒に乗り切りましょう」と言ってくれた61歳のベテランの彼女も。
いつかは必ず、定年や異動、あるいは人生の選択によって、この部署を去り、離れ離れになる日が来る。「会者定離」――それが、この組織という世界の絶対的な真理だ。
あのスナックのカウンターで、元上司がママに告げた「会社を辞めたら、もう会うことはないだろうね」という言葉の通り、俺たちが交わす時間は、いつか必ず綺麗な過去の記憶へと変わる。
だったら、せめて彼らと机を並べているこの限られた時間のなかだけは、俺が彼らの絶対的な盾になろう。彼らが明日も、体調を崩さず、心を病まず、毎日ただ真っ直ぐオフィスに向かって歩いていけるように。その健やかな歩み自体が、彼らの人生における最強の武器になるように、俺はこの場所を守り抜こう。
味のある上司になれているかは分からない。サイボーグの仮面は、もう傷だらけだ。 だけど、明日もまた、俺は誰よりも早くオフィスに出社する。綺麗に整えた髭を少し触りながら、大切な部下たちが待つ現場の最前線へと、真っ直ぐに足を一歩踏み出すのだ。全員が笑顔で、それぞれの人生を歩んでいけるように。





